更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:15 JST
選択回避の法則とは
選択回避の法則とは、選択肢が多すぎると人は選択をしないという結果になるという法則です。
決定回避の法則と呼ぶこともあります。
選択回避の法則は、社会心理学者のエイジンガーが行った「ジャムの実験」と呼ばれている検証によって証明されています。
24種類のジャムと6種類のジャムを売り出したとき、6種類のジャムの方が購買率が高かったという実験です。
選択回避をする原因
なぜ選択肢が多くなると人は選択しなくなるかというと、脳の処理の問題があるからです。
人は物事を比較・選択するときには、個別に情報を得た上でそれぞれをあらゆる点から比べるという処理を脳内で行っています。
そのため選択肢が多ければ多いほどその処理に時間がかかることになり、一定以上の選択肢が提示されると脳は比較処理を拒否してしまうのです。
その結果、どうしても必要な商品でなければ、選択をせずに購入しないという結果になります。
選択回避の法則のマーケティング応用
マーケティングで選択回避の法則を応用する場合は、選択回避の法則が働かないように気を付ける必要があります。
商品の選択肢が多くても、その商品について既に詳しい情報を持っている人であれば、選択そのものを楽しむことができるので問題ありません。
しかし商品知識があまりない、自分の判断に自信を持てない人は選択肢が多いと、商品を買わないという判断になります。
そのため、そうした消費者向けには選択肢を絞る必要がありますが、適正な選択肢をいくつにすればいいのかという問題が発生します。
適切な選択肢
適切な選択肢の数は、以前は5~9が適切と言われていましたが、情報があふれている現代では情報処理を簡略化する傾向があります。
そこで最近では3~5が適切と言われています。自社の製品の性質に合わせてこれらの範囲内で商品の種類を調節しましょう。
選択肢を絞り込ませる手法
消費者によって選択肢を増やしたらいいのか、減らしたらいいのかを事前に判断するのは困難です。
そこで以下の方法で消費者を分岐させ、適切な数の選択肢にむかわせるという方法もあります。
おすすめ
消費者が興味のありそうな商品を過去の購買歴から「おすすめ商品」として紹介する方法があります。
飲食店などでも「店長のおすすめ」「シェフのおすすめ」といった手段があり、これも選択肢を減らす方法のひとつです。
自分で選びたい人は通常のメニューを見ることができます。
ランキング
売上ベスト10といったランキング形式で商品を紹介する方法も、ひとつの選択肢を絞るやり方として効果があります。
人気のある商品に興味を引かれる「バンドワゴン効果」も期待できます。
上記以外にも商品に合わせて選択肢を絞る方法を考えるといいでしょう。
選択的注意
選択的注意(Selective Attention)は、多種多様な情報が提供される環境において、その個人にとって重要だと認識された情報だけを選択し、その情報に注意を向ける認知機能です。
代表的な例としてはカクテルパーティー効果があります。
カクテルパーティーなどのような会話が飛び交う騒がしい環境でも、自分たちの会話に夢中であればさほど周囲の騒がしさは気になりません。
さらにその喧噪の仲でも自分の名前を誰かが言えばそのことにすぐ気付くこともできます。
このカクテルパーティー効果も選択的注意のひとつになります。
選択的注意の実験
選択的注意の実験としては下記の実験が有名です。
被験者に対して左右の耳に同時に違う内容の文章を聞かせます。
事前に片方の耳を指定すると、指定された耳から聞こえた内容は復唱できますが、反対の耳の内容は復唱できませんでした。
その次に今度は復唱できなかった耳から聞こえる内容を文章ではなく、「ピー」という機械音を流します。
すると機械音が流れていることを認識していることはハッキリしました。
つまり、意識していない方の耳からも音は聞こえていますが、文章の場合は内容が聞き取れていないことがわかります。
選択的注意の理論
実験の結果から選択的注意には「記憶のフィルターモデル」という理論が提唱されています。
- 情報は感覚受容器(視覚、聴覚など)から、短期あるいは長期記憶の貯蔵庫に移行する
- すべての情報に対して低レベルの情報処理が行われる(物理的特徴の処理など)
- 高次の情報処理(意味や内容の処理)フィルターを通過した情報のみ対して行われる
- フィルターは受容器と記憶の貯蔵庫の間にあるので、フィルターを通過した情報だけが記憶される
上記が記憶のフィルターモデルの概要ですが、この理論では説明できなこともあり確立された理論ではありません。