更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:34:34 JST
アンカリング効果は心理学における「認知バイアス」のひとつです。認知バイアスには他に「確証バイアス」「後知恵バイアス」などがあります。
アンカリング(Anchoring)は船が碇を下ろしていることを意味しますが、事前に数値を示してから質問をするとその数値に思考がとらわれてしまい身動きできなくなるのがアンカリング効果です。
アンカリング効果の具体例
それでは具体的にアンカリング効果を示す事例を見てみましょう。
質問をするときに具体的な数値を示して質問する場合がありますが、その示した数値が大きいほど回答の数値も大きくなる傾向があります。
- 「〇〇のうち、××の割合はいくらだと思うか」という質問をする前に10と65の数字しか出ないルーレットを回してもらいます。その結果、ルーレットの結果が65のグループの平均値は45%でしたが、10のグループでは25%と低くなりました。
- 「8×7×6×5×4×3×2×1」の計算結果を5秒で推測してもらったときの平均は2,250、「1×2×3×4×5×6×7×8」で同じ推測をしてもらうと平均は512という結果になりました。
アンカリング効果が発生する理由
アンカリング効果が発生する理由やそのメカニズムについても考えてみましょう。
アンカリング効果のメカニズムについては以下の2つの説があります。
不十分な調整
与えられた数値を元に調整してしまうため、特に計算の推測などでは最終的な予測値がアンカーによってゆがめられ、不十分な調整となってしまうという説。
「8×7×6×5×4×3×2×1」の計算予測では、どうしても最初から計算してしまい計算予測が大きな数値(アンカー)に影響を受けてしまいます。
反対に「1×2×3×4×5×6×7×8」の場合は数値予測が小さくなるというメカニズムです。
選択的アクセシビリティ
アンカーが提示されたときにアンカーに関する情報を無意識に集めてしまい、その情報によってアンカリングが生じるという説。
たとえば「国連加盟国のうちアフリカ大陸にある国は何%か」という質問の場合は、常識的な情報としてアフリカ大陸は広いという情報を自分で無意識に集めてしまうので、数値結果をゆがめてしまいアンカリングが生じるという説です。
アンカリング効果の活用例
アンカリング効果は日常生活でも活用されている例がたくさんあります。具体的にどのような例があるのかを見てみましょう。
アウトレットモール
アウトレットモールという業態自体が、アンカリング効果を十分に活用している小売業です。
アウトレットモールでは商品原価をアンカーとして提示して、さらに数十%の割引率で商品を販売しています。
アンカリング効果によって消費者は購買意欲が高まっているのです。
また、消費者心理として商品価値は割引前の値段を基準にしているので、さらにお得感が大きくなります。
一般の小売店でもメーカー希望販売価格をアンカーとして提示して割り引きすると、販売促進効果が期待できます。
コンサルティング料金
コンサルティング業は小売業と違いサービスの品質を標準化するのが難しく、結果コンサルティング業者との比較が難しくなっています。
そのため、複数の見積もりを提出しても利用者に違和感を持たれないので、アンカリング効果が活用しやすくなります。
販売価格の目安がある小売業では、複数の見積もりを出すこと自体ができませんが、コンサルティング業のようなサービス業では違和感はありません。
具体的に料金が異なる以下の3つのサービスセットを準備します。
A. 高料金セット
B. 標準料金セット
C. 低価格料金セット
アンカリング効果としてはBの標準セットに誘導することが目的です。
このときAはBと比べて遙かに高い料金にセットして、BとCとの価格差はそれほど大きくしないことがポイントです。
Aが高ければBに誘導しやすくなりますが、Cが安すぎると利用者に迷いが生じてしまい、スムーズにBへ誘導できなくなります。
Cとそれほど変わらない料金でサービスが充実していると思わせることができれば、Bへの誘導がスムーズになるのです。