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NIH症候群


更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:04 JST

 

NIH症候群とは

NIH症候群とは、英語(Not Invented Here Syndrome)を直訳すると「ここで発明されなかった(もの)」という意味になり、自分が考えた物を一番いいと考える心理傾向のことになります。

また、他人のものは使いたくないという意味から、「歯ブラシ理論」とも呼ばれています。

マサチューセッツ工科大学のスローン経営大学院のラルフ・カッツとトーマス・J・アレンが1982年に発表した論文でNIH症候群を定義しています。

NIH症候群の例

NIH症候群は個人だけでなく企業でも起こりうる症状です。

たとえば、ソニーは自社製品が最も優れていると考えていた時期があり、アップルが開発したiPodに追随してmp3プレイヤーの開発をすることなく、自社の開発した製品にこだわり続けました。

その結果mp3プレイヤーの部門ではアップルに後れをとってしまったという経緯があります。

ウォークマンの大ヒットで自社製品しか考えられなくなりNIH症候群に陥った結果と言えます。

個人では発明王と呼ばれたエジソンもNIH症候群に陥ったと言われています。

エジソンは直流電流を開発しましたが、その後テスラが開発した交流電流について、直流の方が優れているという態度を崩しませんでした。

しかし、結果としては直流電流よりも交流電流の方が、電圧変換を容易にできるため優秀であることが証明されています。

NIH症候群とイケア効果

イケア効果は自分で作った物に対して愛着がわく心理効果のことです。

イケアで販売する家具は自分で組み立てますが、こうした手作りの要素があると同じような商品よりも愛着がわいてくるので評価が高くなる傾向があります。

職場に置き換えて考えてみると、自分が手がけた仕事やプロジェクトに対する愛着は、その後にもよい影響を及ぼすと考えられます。

しかし、このイケア効果がNIH症候群を引き起こす原因になるとも考えられています。

手作りの製品に限らず自分の考えや自分の会社で開発した商品にも愛着がわくと、それ以外のことは価値がないように感じてしまいNIH症候群を引き起こすからです。

NIH症候群を引き起こす原因にはイケア効果以外にもありますが、その中のひとつにSPOT効果があります。SPOT効果には面白い実験結果があります。

SPOT効果の実験

SPOT効果は"Spontaneous Preference For Their Own Theory"の略語で直訳すると、「自身の理論に対する自発的な選好」となります。

つまり、自分の理論だと言われればそれが仮想の理論であっても無意識にそれを好み、正しいと思う効果のことです。

イギリスの心理学者であるグレッグらがこのSPOT効果に関する実験を行っています。

被験者は以下の2つのグループに分けられ、ある研究者の架空の惑星に住んでいる生物に関する文章を7つ読んでもらい、その信憑性を1~100で判断してもらいます。

A. 研究者は「あなた自身」としたグループ
B. 研究者を第三者の「アレックス」としたグループ

実験の結果、Aグループの方がBグループよりも信憑性が高いと判断しました。違いは研究者が誰だったのかということしかないため、自分の理論だと言われただけでも信憑性が高くなったと考えられます。

つまりNIH症候群は実際に自分の考えではなくても、そう言われただけでも発生する可能性があることを示唆しています。

NIH症候群を軽減する方法

NIH症候群を軽減するには、まずNIH症候群と言うものが存在しているということ認識する必要があります。

存在することを知らなければ、意識することもできないからです。

NIH症候群がどのようなものかを知っておけば、自分がNIH症候群に陥っていないかどうかを客観的に判断することができます。

しかし、自分だけで判断するのは難しいので、第三者に客観的に判断してもらうという方法が最も確実となります。

客観的な視点を取り入れることでNIH症候群を軽減することが可能となります。

 

 

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