更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:07 JST
現在志向バイアスとは
現在志向バイアスとは、将来の大きな利益よりも目の前の小さな利益を選択してしまう心理的傾向のことを言います。
たとえば、1年後の10万円と今の5万円のどちらを選ぶのかという選択肢では、どう考えても1年後の10万円の方が得です。
今、5万円をもらっても1年後に利息だけでは10万円にはなりません。1年後にもらった方が得なのです。
しかし、ほとんどの人は5万円を選ぶのではないでしょうか。
これが典型的な現在志向バイアスです。
もちろん1年後に生きていないかもしれないという考え方はありますが、可能性から考えると1年後に5万円がだまっていても10万円以上になる可能性よりは、1年以内に死亡する可能性が低いでしょう。
つまり現在志向バイアスは合理的ではない考え方なのです。
経済学では人は合理的な考え方で行動すると考えられ、それに基づいた分析を行ってきましたが、実際の行動と理論的な行動との乖離がありました。
そこで合理的でない部分も含めた考え方で解決しようとしているのが現在の行動経済学です。
現在志向バイアスはこの行動経済学から生まれた考え方です。なお、経済行動学では「現在バイアス」と呼んでいます。
人は時間の経過によって違う判断をする
従来の経済学では人は時間が経過しても同じ判断をすると考えていました。
そのため、下記のAのパターンで1を選んだ人は、Bでも1を選ぶと考えました。
Aのパターン
- 今すぐ10万円がもらえる
- 1週間後に10万1千円もらえる
Bのパターン
- 1年後に10万円をもらえる
- 1年と1週間後に10万1千円もらえる
つまり、従来の経済学では今すぐ10万円が欲しい人なら、1年後もすぐに10万円が欲しいはずだと考えたのです。
ところが実験をすると多くの被験者がAで1を選んでもBでは2を選ぶ傾向が強かったのです。
人は1年後を想像するときは1週間を短く感じるので、少しでも多い方を選びます。
つまり、選択の基準は時間の経過で違うというのが、現在主流の経済行動学の考え方です。
現在志向バイアスはなぜ起こるのか
現在志向バイアスは目の前のことの価値が大きく感じられる心理です。
遠近法にたとえるとわかりやすくなります。
遠くにある高さ2メートルの木よりも、目の前にある盆栽の木の方が大きく感じるのと同じです。
これと同じように目の前のことが大きく感じられてしまうのが現在志向バイアスですが、これには脳の働きが影響していると言われています。
人間の脳は合理的で未来的な志向をする「新脳(人間脳)」と「旧脳(は虫類脳、哺乳類脳)」と呼ばれる脳があります。
旧脳は目の前の短絡的な欲求を求める働きをしますが、新脳よりも強い影響力を持っています。
そのため新脳では合理的な考えだと理解していても、旧脳の影響に負けてしまい、目の前の短絡的な欲求を選択するのです。
生存競争が激しく、とりあえず目の前の食糧を確保することが最優先の時代の名残とも言えます。
現在志向バイアスへの対処法
現在志向バイアスは先延ばしの心理と言うことができます。
たとえば、1ヶ月で5㎏を減らすダイエットを始めた人が、ダイエットを先延ばしにして目の前のケーキを食べてしまうのも現在志向バイアスです。
同じように、試験勉強をしなくてはいけないのに、いつも見ているTV番組を見てしまうのも現在志向バイアスです。
どちらも将来のことの価値を低く見てしまい、ダイエットや試験勉強を先送りにしています。
このように日常生活でも現在志向バイアスによって、様々な悪影響が考えられます。
なるべく現在志向バイアスの影響を少なくするためには、本来の目標についてその価値や必要性について考える必要があります。
将来の出来事の価値を低く感じるのが現在志向バイアスであれば、より将来発生する価値を高く感じるよう努力しましょう。
ダイエットであれば痩せてきれいになったときに好きな人に告白する、そして告白が成功したときのことを思い浮かべましょう。
もしくはダイエットが失敗して悲惨なことになった結果を想像するのでもいいでしょう。
いま楽をしている場合ではないと思える状況を作ることが大切です。