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文脈効果


更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:10 JST

文脈効果は、アメリカの認知心理学者ジェローム・ブルーナーが1955年に論文で提唱した心理効果です。

人は感覚器官(目や耳など)で情報を得て、それを過去の経験や蓄積した情報を元に何であるかを判断し認識します。

文脈効果の説明によく使われるのは上の部分が欠けた「A」の文字です。

上が欠けることによって「H」にも見えるこの文字は、前後の文字によって「A」と判断したり「H」と判断したりできます。(THEやCATなど)

このように周辺の文字や知識によって情報を補完することを文脈効果と呼んでいます。

文脈効果の実験

ブルーナー博士は文脈効果を証明するために以下の実験を行っています。

瞬間露出機(タキストコープ)と呼ばれる図形や文字を瞬間的に表示する装置で、「13」にも「B」にも見える文字を被験者に与えます。

被験者は以下の3つのグループに分けられ、先に異なる数字や文字を見せてから「13」にも「B」にも見える文字を表示して何に見えるか聴取します。

A) 先に「L, M, Y, A」という文字を見せる
B) 先に「16,17,10,12」という数字を見せる
C) 先に「M,10,16,Y」のように文字と数字が混ざったものをランダムに見せる

その結果Aのグループでは表示時間が短い場合で83%が「B」と回答し、Bグループでも93%が「13」と回答した。

なお、Cグループでは「13」や「B」に見えた人は21%にとどまりました。

このように周囲の情報によって同じ文字でも認識が異なることがわかりましたが、日本語では文脈効果がより顕著だと言えます。

なぜなら、日本語には同音異義語が多い上に、主語がほとんど省略されます。

そのため、文章では漢字で区別することが簡単にできますが、話し言葉ではどちらの意味がわからないことが多いのです。

それでも会話が成立するのは、文脈効果を使いこなしているからだと言えるでしょう。

たとえば以下のような例があります。

「かいとうしてください」 → 調理中であれば「解凍」、試験中であれば「解答」
「のりをとってください」 → 食卓であれば「海苔」、作業中であれば「糊」

それぞれ状況(文脈)によって、適切な意味を判断することができます。

文脈効果の応用

マーケティングでは文脈効果を利用することで、商品の良さを最大限に引き出すことも可能です。

ストレートに商品のメリットや特徴を並べるよりも、周辺の情報や価値を文脈として並べることによって、消費者に商品の素晴らしさを読み込ませることができます。

たとえば、大手喫茶チェーンでは、定期的にコーヒーとしては高い料金で目玉となるコーヒーを提供しています。

しかし、高い価格設定にもかかわらず行列ができるほどの人気となります。

このチェーン店ではいわゆるインスタ映えのする雰囲気を提供したり、高い水準の接客サービスを提供したりという付加価値を提供しています。

これらの付加価値も文脈効果を発生させる要素となります。

非日常的な雰囲気や丁寧な接客によって、提供される商品にも高級な付加価値を感じさせるため、高い料金設定も受け入れられるからです。

同じように、有名なテーマパークで提供される料理や飲み物も高い料金設定ですが、それに対して文句を言う人はおらず、むしろ喜んでいる人が多いのもテーマパークの非日常的な雰囲気が文脈効果となっているからです。

商品やサービスの質の高さに自信があるのに売り上げがよくないという場合は、文脈効果を狙ってみるのもひとつの方法です。

 

 

 

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