後知恵バイアス

後知恵バイアスは確証バイアスに代表される「認知バイアス」のひとつです。

後知恵バイアスは物事の結果が出てから、その結果が前から予測できたように考えてしまう心理的傾向のことです。

よく何か結果が出た後で「やっぱり」「知ってた」「だから言ったのに」などという人がいますが、こうした後出しじゃんけんのようなことをいう人は、後知恵バイアスの心理状態である可能性が高いでしょう。

こうしたことをいう人にかぎって過去に予測していた証拠もなく、予測できなかったことに対しても予測していたかのように振る舞います。

後知恵バイアスは無意識の行動ですが、それによって回避できるのに失敗してしまったという評価をされてしまった人にとっては、迷惑な心理的行動と言えます。

後知恵バイアスの具体例

職場での事例

後知恵バイアスの例はたくさんありますが、最も身近で影響が大きい例として職場で失敗した部下を上司が叱る例があります。

上司が部下を叱る時点では、既に上司が失敗の理由や失敗した結果がわかっている状態です。このような状態のときには後知恵バイアスの心理になりやすいと言えます。

上司は客観的に失敗の理由や結果を見てから判断していますから、自分であれば事前に失敗の原因がわかったはずだと思ってしむのです。

しかし、本当に失敗の原因がわかったのであれば、それを部下に伝えて失敗を防ぐこともできたはずですが、そうしなかったことには疑問を抱きません。

また、結果だけで判断し部下を叱責してしまうと、部下の努力や苦労がわからずなぜ部下がそのような行動したのかも理解できません。

その結果部下に対して不当な評価をしてしまう可能性が高くなります。

報道での事例

職場内での後知恵バイアスよりも大きな影響を与えてしまうのが、報道機関やマスコミによる後知恵バイアスです。

過去にJRの列車が突風で脱線するという事故がありました。運転手は当然悪天候に気を付けながら慎重に運転していました。

しかし、ある新聞社が「突風とはいいながら、風の息づかいを感じていれば、事前に気配があったはずだ」と、運転手を非難する報道をしたのです。

もちろん風の息づかいを感じるなどという非論理的な主張だったため、新聞社が反対に非難を浴びることになります。

客観的に考えれば非論理的なことでも、後知恵バイアスが働くと正論のように思えてしまい、客観的であるはずの報道機関でさえ非論理的な報道をしてしまうという例でした。

後知恵バイアスの原因

後知恵バイアスが起こる原因には以下の2つがあるといわれています。

  • あいまいな記憶
  • 過信

人間の記憶はもともとあいまいにできているので、その時点で重要だと判断されること以外は正確には覚えていません。

そもそも記憶していないことも多いのです。

そのため、物事が起こってから後は実際に起こった事実を重要視して、過去の記憶よりも優先してしまうのです。

また、人は自分が考えていることが間違えていると認めるのを苦痛と感じるので、考えていたことと違う結果が出た場合にその苦痛を避けるために後知恵バイアスが起こると考えられます。

さらに後知恵バイアスを繰り返していると、自分は最初からわかっていたのだと思い込んでしまうため、過信がますます強くなっていきます。

後知恵バイアスの対策

後知恵バイアスは自分のあいまいな記憶と過信によって生じますが、ほとんど無意識のうちに行われています。

そのため、完全に対策することは難しいですが放っておくと、後知恵バイアスによって不当な評価をされる人が出てしまいます。

特に自分が人を評価するような立場にある人は、以下を考慮しなるべく後知恵バイアスを排除して正当な評価をするよう心がけましょう。

  • 判断を伝える前に「人は結果に流される」ことを前提にして、自分の判断を客観的に評価してみましょう。
  • 結果は必ずしもひとつではなく、他の結果が導かれた可能性があります。実際の結果以外にどのような可能性があったのかも考慮します。
  • 結果を判断する場合は評論家の立場ではなく、当事者の立場で判断しましょう。評論家の立場になると結果に左右されやすくなります