更新日:Thursday, 23-Mar-2023 04:03:51 JST
自己成就的予言とは
自己成就的予言とは心理学の概念のひとつで、自分で「こうなるのではないか」と思って行動していると、実際にその予言が現実のものとして成就してしまうという現象です。
予言の自己成就とも呼ばれます。
自己成就的予言はアメリカの社会学者ロバート・K・マートンが提唱しましたが、同じくアメリカの社会学者W・I・トマスも「もし人がその状況を真実と決めれば、その状況は結果において真実である」という定理を基に理論を展開しています。
たとえば、自分は人前で話すのが苦手だと信じている人は、それが原因となり人前で極度に緊張してしまい、結果的に話すのに失敗してしまうのが自己成就的予言です。
自己成就的予言のメカニズム
社会学者のロバート・ キング・マートンは1961年の著書「社会理論と社会構造」で、自己成就的予言を以下のように定式化しました。
- 最初の誤った状況の前提が発生すると、
- 新しい行動を引き起こす。
- その結果、それ以外の要因で結果が引き起こされても、
- その行動が最初の誤った考えを真実としてしまう。
これを具体的な例で置き換えてみると以下のような流れになります。
- 僕は意思が弱いから勉強ができないだろう(間違った前提)
- 今は試験期間だが新しいゲームソフトがリリースされたので、ちょっとだけならいいだろう(新しい行動)
- ゲーム使った時間は少ないので、試験が上手くいかなかったのはヤマが外れただけ(それ以外の原因で失敗)
- 自分の意思が弱いからゲームをしてしまって試験に失敗した(最初の前提を真実としてしまう)と考えてしまう
上記の例では自己成就的予言はマイナスの結果をもたらしていますが、自己成就的予言はプラスの結果になることもあります。
このように自己成就的予言は間違った前提による結果が、さらに間違った前提を信じることにつながるので、一度発生してしまうとなかなか抜け出すことができなくなる特徴があります。
自己成就的予言の実例
自己成就的予言の実例は日常生活にはたくさん存在します。
銀行の取り付け騒ぎ
銀行が潰れるというデマが発端で銀行に預金者が殺到し、預金をすべて解約しようとする取り付け騒ぎが起こったことがあります。
発端は信用金庫に就職が内定した女子高生の会話で、友人が大手銀行と比べると信用金庫の規模が小さいことから、「信用金庫は危ないんじゃない?」という発言をし、それを聞いた人が偶然信用金庫から預金を全額下ろした人を思い出し、経営が危ないと確信しました。
その話があっという間に広まって、信用金庫に人が押し寄せたのです。
これもデマという正しくない事実を前提として、預金を下ろすという行動を起こした結果起こった自己成就的予言のひとつです。
受験生への発言
家族や知り合いに受験生がいると「落ちる」「すべる」という言葉を控えるようになります。
これはその言葉を聞くことで受験生が不安になり、その不安から勉強時間が不足して結果として受験に失敗することを避けるためです。
自己成就的予言を避けるための行動と言うことができます。
血液型占い
血液型によって性格が左右されるというのは科学的な根拠はまったくありません。
それにも関わらず日本では信じる人が多いのは、自己成就的予言の影響もあると思われます。
A型の人は真面目で几帳面な人が多いと信じてしまうと、自ら几帳面な行動をしてしまうことがあります。
その几帳面な行動が占いによる性格を裏付けることになり、ますます血液型と性格の関係を信じてしまうのです。