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ピーク・エンドの法則


更新日:Thursday, 23-Mar-2023 04:05:19 JST

 

ピーク・エンドの法則とは

ピーク・エンドの法則とは、人は自分の経験をほとんどそのピーク時にどうだったかと、それがどう終わったか(エンド)だけで判定するという法則です。

ピークは感情が最高に高ぶった時点で、エンドはその出来事の終わり方を意味します。

ピーク・エンドの法則は2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマンによって提唱されています。

ピーク・エンドの法則の実験

カーネマンはピーク・エンドの法則を提唱する前にいくつかの実験を行っています。

冷水の実験

冷水の実験では以下の2つのパターンで被験者に冷たい水に手を入れさせて、その後60秒維持させてから不快感を機械的に測定します。

A) 14度の水に手を入れてそのまま60秒待つ
B) 14度の水に手を入れて60秒待った後、30秒間徐々に温度を1度上げる

Aの不快度は8.44でBの不快度も8.34とほぼ同じでしたが、Bの最後の30秒は不快度が5.69と下がりました。

被験者の感想も、もう一度経験するならBがよいと答えた人が69%と多数でした。この実験ではエンドの記憶が実験全体の印象をよくしたと考えられます。

結腸内視術の実験

結腸の内視による検査を被験者に行い、60秒ごとに痛みの度合いを被験者から聴取します。

さらに施術終了後にどれくらいの痛みだったかも被験者から聴取します。

施術時間はそれぞれ違っていましたが、施術全体の痛みの度合いは施術中のピーク時の痛みと一致していました。

つまり施術全体の痛みの度合いが施術時間と無関係に、ピーク時の痛みと比例したことになります。

ピーク・エンドの法則の例

ピーク・エンドの法則は日常生活でも、よく見かけます。

ピーク・エンドの法則と行列

ピーク・エンドの法則はディズニーランドやUSJもアトラクションでも応用されています。

人気のあるアトラクションでは長い行列ができますが、2時間も待って5分で終わるアトラクションは本来不合理なはずです。

しかし、それでも並ぶ人がいなくならないのは、アトラクションが終わってしまうと2時間の待ち時間のことは印象に残らなくなるからです。

アトラクションの時間は退屈な待ち時間に比べると、感情のピークであり、同時にエンドでもあります。

つまりピークとエンドが同時発生するので、強く印象に残るので、待ち時間は忘れてしまうのです。

飲食店に長い行列ができるときも、同様にピーク・エンドの法則が働いていると考えられます。

ピーク・エンドの法則と映画

映画やドラマでもクライマックスシーンや印象的なエンディングがあるとその映画に対する評価が高くなります。

映画は2時間を超えることもあり、退屈な時間の方が長いのは間違いありませんが、それでもクライマックスシーンや最後のどんでん返しなどが成功すれば、退屈なシーンは忘れてしまい面白かったという評価につながります。

つまり、クライマックスはピークであり、どんでん返しはエンドだから印象に残るのです。

全編クライマックスをうたった作品よりも、一度のクライマックスが成功する方が高い評価につながることもあります。

全編クライマックスにしてしまうと、むしろピークがなくなってしまうからです。

ピーク・エンドの法則の活用

ビジネスでもピーク・エンドの法則を応用することは可能です。

特に交渉をする場合は相手にピークやエンドを感じさせることでうまくいく場合があります。

たとば価格交渉の場合、相手が値下げを要求してきてその下げ幅が範囲内であったとしても、すぐに了承しないことでピーク・エンドの法則が応用できます。

自分が値下げを交渉する立場になったときを考えるとわかりますが、値下げして欲しいと言った途端に了承されてしまうと、あまりよい印象は受けません。

なぜなら、最初の価格をわざと高くしているのではないかという疑念が浮かぶからです。

このように値下げに成功して買ったはずなのに納得ができない状態を「勝者の呪縛」と呼んでいます。

つまり勝者の呪縛を避けて相手に値下げ交渉に勝ったと思わせると、相手にとってはピークとなるので印象よく交渉を終わらせることができます。

そのためには値下げの要望をわざといったん断る(渋る)ことも必要になります。

 

 

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