更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:11 JST
フット・イン・ザ・ドア・テクニックとは
フット・イン・ザ・ドア・テクニックとは、交渉の場面で、本命の要求を通すために、まず簡単な要求からスタートし段階的に要求レベルを上げる方法です。
人間心理を利用した交渉テクニックのひとつになります。
フット・イン・ザ・ドアの意味はドアに足を踏み入れることで、訪問販売などで門前払いされないように足でドアを閉められるのを防ぐ行為を意味します。
ただし、実際に足を入れる行為のことではなく「足を入れたらこちらのもの」という慣用句を引用した名称です。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックは門前払いを阻止するテクニックではなく、些細な受け入れやすい要求を積み重ねてOKをもらい続け、本命の要求も受け入れやすいようにするテクニックです。
具体的にはセールスや勧誘でよく使われているトーク「5分だけお時間をいただいてもよろしいでしょうか」が、フット・イン・ザ・ドア・テクニックのひとつです。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックと一貫性の法則
フット・イン・ザ・ドア・テクニックでは心理学の一貫性の法則を応用しています。
人は言動や考え方が一貫している点を高く評価する傾向にあるので、自らも行動に一貫性を持たせようとする心理が働きます。
そのため、一度小さな要求を認めてしまうと、次の大きな要求も認めないと一貫性が保てないと考えてしまい、大きな要求をのむ可能性が高くなります。
これが一貫性の法則です。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックはこの一貫性の法則を応用して、本命の要求をいきなり話すのではなく、その前に小さな要求を積み重ねてから本題を切り出すテクニックです。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックの実験
フット・イン・ザ・ドア・テクニックに関する実験のいくつかをご紹介します。
本命のお願い1:
女子大生に対して「大学から何キロも離れたところに木を植えて欲しい」と頼む
直接お願いしたときの承諾率よりも事前に環境問題に関してのアンケートをとってから、数日後にお願いした方が承諾率は高くなりました。
本命のお願い2:
がん患者の臓器提供の同意書にサインをしてもらう
これも事前に「がん協会が発行しているピンバッチを身に付けてほしい」という要望を、サインの要望の数日前に行ったところ、直接お願いしたときの46%から74%に承諾率がアップしました。
本命のお願い3:
自宅の庭の芝生に「静かに運転をしよう」という看板を立てさせてもらう
直接お願いをしたときの承諾率は16.7%、その前に「7.5センチ四方の安全運転をしようというステッカーを車のフロントガラスか家の窓に貼ってください」というお願いをしたところ、本命の承諾率は76%になりました。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックの例
フット・イン・ザ・ドア・テクニックは日常生活でもたくさんの例があります。
たとえば、家族が買い物に行くついでにその店の近くで自分の買い物を頼んだとします。
それが承諾されたら少し遠い店での買い物もお願いすると引き受けてもらう確率が上がります。
買い物でも下記のように店の立場でよくフット・イン・ザ・ドア・テクニックは使われています。
「いらっしゃいませ。どうぞごゆっくりご覧下さい。」
「どんな商品をお求めですか?」
「ぜひご説明させて下さい。」
上記は店員との受け答えではよくあることですが、それぞれに承諾の意思をしてしまうと、一貫性の法則が働いてしまいフット・イン・ザ・ドア・テクニックに乗ってしまうことになります。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックの応用
ビジネスシーンではフット・イン・ザ・ドア・テクニックを応用できる場面はたくさんあります。
セールスであれば、まずは「5分だけお時間をいただけますか」と切り出し、それが受け入れられれば商品販売まで結びつく可能性は高くなります。
また、オフィス内にウォーターサーバーやコーヒーサーバーなどをレンタルするビジネスの場合は、最初の3ヶ月は無料というシステムを導入している場合があります。
無料で設置することを承諾すると、有料になっても設置を続ける可能性が高くなりますが、これもフット・イン・ザ・ドア・テクニックの応用と言えるでしょう。