更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:11 JST
フォールス・コンセンサス効果とは
フォールス・コンセンサス効果とは、自分の意見や考え、行動が常に多数派で、かつ正常であると思い込む認知バイアスのことです。
直訳すると「間違った合意」という意味になりますが、これは自分の意見は多数派なので周囲は合意してくれるという間違った認識を引き起こすため名付けられました。
フォールス・コンセンサス効果は、1970年代にスタンフォード大学の社会心理学者リー・ロスが人々の認識の調査結果を基に提唱しました。
フォールス・コンセンサス効果の実験
リー・ロスは学生を対象に以下の実験を行いました。
学生たちに、体に広告の看板を付けたサンドイッチマンになるよう依頼します。
その後、サンドイッチマンになることを承認した学生と拒否した学生に、他の学生は承認すると思うかという質問をしました。
結果はサンドイッチマンを承認した学生の方が、他の学生も承認するはずと答えた比率が高くなったのです。
つまり、拒否した学生も他の学生も拒否するはずだという比率が高かったことになり、いずれの場合も自分と同じ考えをする人が多数派だと考えていたことになります。
フォールス・コンセンサス効果の原因
フォールス・コンセンサス効果が発生する理由としては、正常性バイアスと帰属バイアスの2つが考えられます。
フォールス・コンセンサス効果と正常性バイアス
人間の脳は基本的に、現状が正常な状態であることを前提として、自分の行動を決定する傾向があります。
これはある意味では当然のことで異常な状態を前提とすると適切な行動が取れなくなるからです。
これを心理学では正常性バイアスと呼んでいて、具体的には非常ベルが鳴ってもすぐに避難しないなどの行動に表れています。
フォールス・コンセンサス効果も正常性バイアスが原因で発生すると考えられます。
自分の行動や考え方が大多数と同じ、つまり正常だと考えてしまうためフォールス・コンセンサス効果が発生します。
フォールス・コンセンサス効果と帰属バイアス
帰属バイアスにはいくつか種類がありますが、そのひとつに対応バイアス(基本的帰属錯誤)があります。
対応バイアスはたとえば、遅刻した人を見るとその人の性格がルーズだから遅刻すると考えることです。
実際には不可抗力で遅刻したかもしれませんが、対応バイアスがかかるとこのように不当な評価をしてしまいます。
対応バイアスがかかることで、フォールス・コンセンサス効果はより強化されてしまいます。
フォールス・コンセンサス効果の例
フォールス・コンセンサス効果の例としてよく引き合いに出されるのが、電子メールでの連絡です。
連絡は確実に本人に伝えるものなので、電話ではなく電子メールで連絡するのは非常識だという考えです。
しかし、相手が仕事中に電話することも迷惑になる場合があり、これも非常識と言われてもしょうがないでしょう。
連絡内容が急を要する場合、確実に本人に伝わったかどうかを確認すべきものは電話を、それ以外は電子メールで連絡しメールが読まれたかどうかを確認するだけで十分なはずです。
これ以外にも日常会話で自分では相手をほめたつもりが、相手にとっては傷つけられる言葉だったという経験をした人も多いでしょう。
これも自分の考えを常識と思っていたために発生したフォールス・コンセンサス効果のひとつです。
フォールス・コンセンサス効果の対策
フォールス・コンセンサス効果がビジネスの場で発生してしまうと、場合によっては取引先とトラブルになる可能性もあります。
フォールス・コンセンサス効果を未然に防ぐには、客観的な根拠を準備することが大切です。
プレゼンテーションで展開する論理などは、客観的事実や統計の数字を元にして展開することでフォールス・コンセンサス効果による失敗を防ぐことができます。
また、常に自分の考え方を客観的に考える癖を付けることで、フォールス・コンセンサス効果以外のバイアスにも気付く可能性が高くなります。