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保有効果


更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:10 JST

保有効果とは

保有効果とは、人が所有物に高い価値を覚えて手放したくないと感じる心理効果です。

1970年代初めに、経済学者のリチャード・H・セイラーによって提唱された行動経済学の心理効果で、別名を「授かり効果」ともいいます。

保有効果の実験

行動経済学者のダニエル・カーネマンが、以下の要領で保有効果に関する実験を行っています。

被験者を「売り手グループ」と「買い手グループ」の2つのグループに分け、売り手グループの被験者だけに、普通6ドルで販売されている大学のロゴ入りマグカップをひとりひとつずつプレゼントしました。

売り手と買い手にそれぞれ売値と買値を提示させたところ以下の結果となりました。

  • 通常価格 6ドル
  • 売り手グループの売値の平均7.12ドル
  • 買い手グループの買値の平均2.87ドル

上記のように一度自分の所有物となったマグカップの価値は、買値や通常価格よりも高くなりました。

保有効果の原因

保有効果では次のような心理の変化があります。

  • 持っていない状態 → 持っている状態 → 喜びを感じる
  • 持っている状態 → 手放す状態 → 苦痛を感じる

保有したときに感じる喜びと手放すときに感じる苦痛は、相殺されてゼロになるわけではなく「プロスペクト理論」によって、損失により大きな不満を感じるため手放す苦痛が残ってしまいます。

そのため保有効果では手放す苦痛(損失)も相殺する必要があることから、損失回避の意味からより高い価値を感じてしまいます。

カーネマンの実験では買い手と売り手に分けて実験をしましたが、売り手と買い手では根本的に同じものに対する価値観が違います。

そのためフレーミング効果によって売り手はよりそのものの価値を高くしてしまいます。

フレーミング効果は伝え方や表現(フレーミング)によって、印象や価値が変わる心理のことです。

売り手という立場になることで、高い価値で売ろうとすることも保有効果を高くしています。

保有効果が発生するケースとしないケース

すべての保有物に保有効果が発生するわけではありません。

保有効果が発生するのはその所有物を使用する目的で持っている場合だけとなります。

たとえば、ワインのように長い間熟成させることで価値が高まるものでも、自分で飲むために買った場合は保有効果が生じます。

しかし、最初から転売目的の場合は保有効果は発生しません。

また、物だけでなく休暇時間も保有効果の対象となります。

休暇でゆっくりしようと思っていたところに、急に会社から連絡があり出勤を告げられると、代休だけでは気持ちが収める収まらなくなるのも保有効果のひとつです。

もちろん、販売用の商品も仕入れをした時点では所有資産ですが、最初から転売目的なので保有効果はありません。

また、お金も基本的には物やサービスと交換する目的で持っているので保有効果はありませんが、貯金が目的の場合はなるべく使いたくなくなるのも保有効果と言えるかもしれません。

保有効果の応用

保有効果はビジネスに応用することが可能です。

たとえば、ソフトウェアでは無料試用期間を設けているものがあります。

一定期間試用させることで保有効果が期待できるからです。

また、無料試用期間では無料で使わせてもらっているという気持ちから、お返しをしなければいけないという「返報性の法則」が働く可能性もあります。

ただし、ビジネスでは保有効果がマイナスに働くことの方が多いかもしれません。

なぜなら、既に保有している物を手放して、新しい商品を購入することを難しくするからです。

商品の代替には保有効果を上回る価値を提供しなくてはいけません。

 

 

 

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