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虚偽記憶


更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:07 JST

 

虚偽記憶とは

虚偽記憶とは、実際には起こっていない出来事に関する記憶のことで、「過誤記憶」とも呼ばれています。

虚偽記憶は記憶の中でも「エピソード記憶」と呼ばれている記憶に関する間違った記憶のことを言います。

記憶には「意味記憶」と「エピソード記憶」がありますが、意味記憶は名称のとおり「1分は60秒」といったその言葉の意味に関する記憶です。

対してエピソード記憶は個人的経験に関する出来事の記憶で、時間や場所、および感情を伴っています。

なお、どちらの記憶も長期記憶と短期記憶に分けた場合は、「長期記憶」に属します。

虚偽記憶はエピソード記憶の思い違いのことで、実際には経験していない記憶や経験していても間違った形で記憶されているものを言います。

そして虚偽記憶は特殊な事例ではなく、誰にでもある記憶の思い違いで、間違いだと気付かず正しい記憶だと思っていることも多いのです。

虚偽記憶の例

虚偽記憶は誰にでもあることで、さほど重要な記憶でなければそれが間違った記憶だとしても日常生活には特に影響はありません。

しかし、それが犯罪や裁判に関わることになると、虚偽記憶かどうかは重要な意味を持ちます。

虚偽記憶の概念は、アメリカの認知心理学者エリザベス・ロフタスの研究で公に認知されるようになったものですが、このきっかけになったのも1980年以降のアメリカで頻発した裁判がきっかけでした。

当時アメリカでは心理カウンセラーやセラピストが行った催眠療法によって、幼児期に虐待を受けた記憶を取り戻したこと根拠とした裁判が頻発しました。

ロフタスはこれらの事件を研究し、被害者の記憶は必ずしも確かなものではないと司法によって立証するに至りました。

性的な被害に遭ったときに、そばにあったテレビの番組に映っていた人物を犯人だと記憶していた例もあります。

また、記憶は意図的に改ざんしたり、違う記憶を植え付けたりすることも可能だという実験も行われています。

虚偽記憶の実験

ロフタスは実験によって実際にはなかった記憶を被験者に植え付けることに成功しています。

虚偽記憶に関する最初のきっかけであったセラピストなどの催眠療法を参考に、被験者に以下の記憶を受けつけたのです。

それは「ショッピングモールの迷子」と呼ばれる記憶で、実際にあった幼少期の記憶とともに、ショッピングモールで迷子になって老人に助けられて家族に会うことができたという記憶を混入しました。

その結果25%の被験者がそれを事実として認識したという結果を得られています。

しかしショッピングモールでの出来事のような日常的な記憶だから、植え付けることができたとも考えられます。

しかし、9.11のテロ事件のような大きな衝撃を与えた出来事でも、虚偽記憶が確認されています。

過去10年間にわたって、9.11の悲劇的な出来事に関する人々の記憶が着実に低下していく過程を追跡した研究があります。

攻撃の発生直後に記憶を調査し、次に1年後に調査したところ、すでに記憶の細かい部分の37%が変化していることが明らかになったという結果があります。

虚偽記憶を防ぐ方法

刑事裁判において被害者や目撃者の証言が決めてとなって、有罪判決となるケースは決して少なくありません。

つまり虚偽記憶によって冤罪となるケースも数多くあることになります。

警察による面通しと呼ばれる捜査方法は、複数の外見の似た人物を目撃者に見せて、その中に容疑者がいないか確認させるものです。

そのとき目撃者はじっくりと時間をかけてひとりひとりを見るように言われますが、実は強く残っている記憶ほどすぐに想起できるのです。

そこで、オーストラリアのフリンダーズ大学のニール・ブリュワー博士は、以下の実験を行いました。

900名以上の被験者に、万引きや自動車窃盗などの犯罪を扱ったいくつかの短い映像を見せ、その後すぐに顔写真を12枚見せました(1枚は本物)。

この実験の結果、同じ面通しでも精度が格段に向上し、被験者が正しい容疑者を言い当てる確率は、通常の面通しに比べて21~66%上昇しました。

さらに、面通しを1週間後に行った場合でも、即座に答えを求められた被験者のほうが、はるかに高い正答率を示した結果になりました。

つまり、虚偽記憶による冤罪被害を減らすためには、すぐに答えを求める方式に変更した方がよいという結論になります。

 

 

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