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基準率の錯誤


更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:04 JST

基準率の錯誤とは

基準率の錯誤とは統計や確率を考えるときに、イメージしやすい数字を元にして直感的に考えてしまい、統計学的な根本的な基準を無視してしまうことを言います。

その結果、実際の確率や統計の数値とはかけ離れたものを、本来の数値と勘違いしてしまいます。

英語では「Base Rate Fallacy」と呼ばれています。

基準率の錯誤の例題

基準率の錯誤には有名な例題がいくつかあるので紹介します。

タクシー問題

◆問題
ある町には緑のタクシーと青のタクシーの2つの会社があります(台数比は緑85%で、青は15%)。

ある夜にタクシーがひき逃げ事故を起こしました。

この事故には目撃者がいて青タクシーが事故を起こしたと証言しました。

ただし夜で緑と青は区別が難しいので、同じ状況で目撃者がどの程度確実に証言ができるかをテストしました。

その結果、正しく証言できる確率は80%でした。

さて、事故を起こしたのが本当に青タクシーである確率はどのくらいでしょうか。

◆正解
ほとんどの人が直感的に青タクシーである確率は80%と考えてしまいます。

正しく証言できる確率80%にとらわれてしまい、青タクシーの台数比を忘れてしまうからです。

もし正しく証言できる確率80%という条件がなければ、緑タクシーの台数の方が多いので確率的には緑タクシーが事故を起こした確率が高いはずです。

わかりやすくするためにタクシーの総台数を100台として、青は15台、緑は85台とします。

その上で以下のように台数を計算してみます。

1. 緑のタクシー85台のうち、緑と識別するのは85台×80%=68台
2. 緑のタクシー85台のうち、青と識別するのは85台×20%=17台
3. 青のタクシー15台のうち、緑と識別するのは15台×20%=3台
4. 青のタクシー15台のうち、青と識別するのは15台×80%=12台

上記で青と識別される台数は2と4の合計29台です。

実際に青のタクシーを識別した台数は4の12台なので、青のタクシーが青だと識別される確率は12/29=0.41、約41%です。

感覚的に80%と考えたときと実際の確率の差は意外に大きくなってしまいます。

乳がん問題

◆問題
40代の女性の乳がんの比率は1%です。

乳がんを持つ人にある検査を行うと、80%の確率で乳がんであるという結果が出ます。

一方で乳がんではない人にも同じ検査を行うと、9.6%の確率で乳がんであるという結果が出ます。

ある40代の女性がこの検査の結果、乳がんであるとされたが、この人が実際に乳がんである確率は何%でしょうか。

◆正解
これもわかりやすく具体的な人数を、40代の女性1万人として考えてみます。

1. 乳がんにかかっている人が、検査で乳がんとされる人数
1万人×1%×80%=80人
2. 乳がんでない人が検査で乳がんとされる人数
1万人×99%×9.6%=950人

検査で乳がんと判断される人数は合計1,030人で、実際に乳がんの人は80人となります。

つまり、実際に乳がんの人が検査で乳がんと判断される確率は80/1,030=0.077、約7.7%にすぎません。

これも直感的には80%と考える人が多い中で、大きくかけ離れた数字となります。

基準率の錯誤を避ける方法

基準率の錯誤を避ける方法は計算に強くなるしかありませんが、一般的には確率に関しては苦手という人が多く、「確率の無視」という認知バイアスもあるくらいです。

しかし、こうした統計や確率を考える場合は、基準率の錯誤というバイアスがあることを念頭に置いて、重要なポイントを見逃さないことが大切です。

タクシー問題であれば青色タクシーの台数の比率、乳がん問題であれば乳がんにかかっている人の人数の比率が重要なポイントとなります。

計算問題ではなく、たとえば実際に自分がある病気の検査の対象となったときに、実際の確率を知ることで冷静に対処することができます。

 

 

 

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