更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:21 JST
有名な心理学者のアドラーは「人間関係の悩みはすべて対人関係の悩み」と言っていますが、その対人関係の悩みを解決する手段として「課題の分離(Separation of Tasks)」を提唱しています。
課題の分離は今抱えている問題は誰の課題かを考えることで、自分が解決すべきでない課題を抱えこまなくなり、人間関係の悩みを減らすことができるというものです。
課題の分離の例
課題の分離について実生活ではどのような実例があるのでしょうか。
親子間の例
課題の分離の例としてよく引き合いに出されるのが、宿題をやらない子供に対する親の立場です。
課題の分離を考えるときには、以下の質問によって誰の課題なのかを明確にします。
- その課題の結果を誰が最終的に引き受けることになるか?
- その課題の結論を出すのは最終的に誰か?
上記の質問を当てはめてみると宿題をやらなかった結果は、子供に跳ね返ることは間違いありません。さらに宿題をやるかやらないかを決めるのも子供です。
子供の責任は親が取らなくてはいけないので、親だと考える人も多いと思いますが、宿題をやらないことで先生に叱られるのも、勉強を覚えなかったことで将来不利益になるのも子供です。
宿題を無理矢理やらせようとしても、結果としてやるかやらないかは子供が決めることになります。
ですから、本来は子供が宿題をやるかやらないかは、子供に決めさせるべきですが、現実的には宿題を手伝ったり、強制的にやらせたりする親が多いのが現実です。
職場での例
職場ではよく自分が出世しない、給料が上がらないことを上司の評価が適正でないせいにする部下がいます。
これを課題の分離として考えてみると以下のようになります。
- 部下を評価するのは上司の課題
- 部下の課題は成果を出したりスキルを上げたりすること
上記のように分けて考えてみると自分のやるべきことがハッキリとわかるようになります。
自分の給料を上げたいのであれば成果を出すことに時間を使うべきであって、上司を非難している暇はないと気付くはずです。
他人の課題について思い煩うよりは、自分がやるべきことをしっかり認識して自分の課題に集中することが大切です。
課題の分離ができない場合の弊害
子供の宿題という課題を例にして、課題の分離ができない場合に親や子供にはどんな弊害があるか考えてみましょう。
- 子供がやるべきことを手伝ったり、やらせようと説得したりすることで親が忙しくなる
- 親が子供に強く強制すると、子供は感情的に傷つきさらには反抗的になる
- 親が口を出すことで子供に問題解決能力がつかなくなり自信を失う
- 子供が親に依存して責任を親に押しつけるようになる
親子であっても課題を分離して、子供にまかせてしまうのことに抵抗を覚える人は多いでしょう。
しかし、本来子供がやるべきことを親の課題として口出しをしてしまうと、以上のような弊害があります。
さらに加えて課題を分離したからといって、親が子供にノータッチという意味ではありません。
それが「共同の課題」という考え方です。
課題の分離だけでなく共同の課題とする
親が子供の宿題を手伝ったり、学校に掛け合って宿題を減らしたりすることは課題の分離の考え方に反します。
しかし、宿題をやりやすい環境にしたり、勉強法をアドバイスしたりすることは親が子供の課題をやっていることにはなりません。
子供には「困ったら相談に乗るし、応援しているよ」と声をかけて、協力すること伝えればそれは宿題を「共同の課題」にしたことになります。
共同の課題にしてしまえば、課題の分離ができない弊害もなくなり、子供の成長を促しながら依存心をなくすこともできるのです。