更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:22 JST
エンダウド・プログレス効果(Endowed Progress Effect)は、直訳すると「与えられた進捗」という意味になります。
人はまったくゼロから目標に向かうよりも、はじめに少しでも進捗を与えられると目標に到達したくなる気持ちになる効果のことです。
エンダウト・プログレス効果は2006年に発表された心理学の論文で明らかにされた効果です。
エンダウド・プログレス効果の実験
エンダウド・プログレス効果を証明した実験内容を紹介しましょう。
洗車場の利用者を次の2つのグループに分けます。
A. 8個のスタンプを貯めるカードを配布したグループ
B. 10個のスタンプを貯めるカードに2個スタンプを押した状態で配布したグループ
どちらも人数は同じで、8個スタンプが貯まると洗車が1回無料になるサービス条件でした。
どちらも8個のスタンプを貯めるという同じ条件でしたが、最後までスタンプを貯めた人の割合は、Aが19%、Bが32%と大きく結果が違いました。
これによってゴールまでの距離が同じ状態でも、進捗を与えられるとモチベーションが高くなり最後までゴールを目指す可能性を高くすることが証明されました。
エンダウド・プログレス効果の心理的背景
目標が近づくことが目に見えて感じられると、やる気が高くなることを「目標勾配効果」と呼んでいますが、エンダウト・プログレス効果ではこの効果を意図的に発生させています。
実験ではポイントカードにスタンプが押してあるので視覚的に進捗を感じさせることによって、目標勾配効果がより高くなっていると言えます。
また、エンダウト・プログレス効果には、一度手に入れたものを無駄にしたくない「保有効果」も含まれているので、損失を回避したいという気持ちが働くことで目標達成の可能性を高めています。
エンダウド・プログレス効果の活用
エンダウト・プログレス効果はポイントサービスなどで既に実践されているため、自社のサービスでも活用している企業は多いでしょう。
しかし、与える進捗は多すぎても好きな過ぎても効果がなくなる可能性があるので注意しましょう。
進捗の手助けは10%~25%といわれているので、10ポイントを貯めるサービスでは、はじめから付与するのはせいぜい1~2ポイントにとどめておきましょう。
また、ポイントサービス以外でも学習アプリにエンダウト・プログレス効果を応用している例があります。
1日5問の問題を解くアプリですが、アプリの上部にプログレスバーを表示し、設問が進むたびにバーが伸びていくシステムとなっています。
このプログレスバーは1問目を解く前から少し進んでいるので、進捗を無駄にしたくない心理からエンダウド・プログレス効果が発動し、最後までやり遂げる手伝いとなります。