更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:06 JST
代替思考とは
代替思考とはステレオタイプのものの見方を抑制するための思考法のひとつです。
ステレオタイプは「特定の集団に属する人に対する過度に一般化されたイメージ」のことです。
たとえば、女性は感情的になりやすい、欧米人は鼻が高くて色が白い、イタリア人はすぐに女性を口説く等がステレオタイプ的なものの見方です。
ステレオタイプ自体は悪いものではなく、むしろ日常生活をする上では必要不可欠なものです。
なぜなら、人間の脳は物事を判断するときには、過去の記憶や知識、情報を比較して複雑な作業をするので、とっさの場合は判断が間に合わないことがあるからです。
それが、老人や子供は思いもよらない動きをすることがあるというステレオタイプを持っていれば、車を運転中に老人や子供を見ただけで十分に離れると入った行動を即座にすることができます。
そしてそれが事故を未然に防止することもあるのです。
しかし、反対にステレオタイプによって正しい判断ができなくては困ることもたくさんあります。
たとえば、企業の人事部で就職のための面接を行う場合は、極力ステレオタイプ的な先入観を抑制する必要があります。
また、日本に住む外国人が増えている状況では、日本国籍を持たない人へのステレオタイプも抑制しなければ、人間関係にも影響があるでしょう。
人種差別や偏見と捉えられてしまうからです。
心理学ではステレオタイプに対する対処として、様々な研究が行われてきましたが、そのひとつがステレオタイプの抑制です。
ステレオタイプの抑制と代替思考
人はステレオタイプの思考をしてはいけない場面になると、自然にそれを抑制しようとしますが、それが返って反対にステレオタイプに対する意識を強くすることになります。
これを「逆説的な結果」や「リバウンド効果」などと呼んでいます。
ステレオタイプの抑制実験
ある実験ではスキンヘッドの男性の写真を見せて、男性の典型的な1日を記述することを求めました。
スキンヘッドはネオナチに多かったため欧米では「暴力的」「排他的」というステレオタイプが定着しています。
被験者は次の2つのグループに分けられています。
A. 何も条件を付けずに記述させた(統制的)グループ
B. ステレオタイプを避けるよう指示した(抑制的)グループ
当然、Aに比べてBはステレオタイプの記述はほとんどありませんでしたが、次にBのグループに条件を付けずに記述させたところ、Aグループよりもステレオタイプの記述が多くなったという結果になりました。
代替思考の実験
ある実験で被験者に、次の2つのパターンで5分間考えたことを記述させました。
A. シロクマについて意識的に考えるよう指示
B. シロクマについて意識しないよう指示
Bのグループは当然シロクマについての記述はありませんでしたが、さらに無条件で記述させるとリバウンドが発生してAよりもシロクマの記述が多くなりました。
そこで実験者はBのグループにシロクマを考えないように求めた上で、さらに「赤いフォルクスワーゲン」について考えるよう指示したところ、リバウンドがなくなりました。
つまり、代替思考として「赤いフォルクスワーゲン」を意識することで、シロクマに対するステレオタイプの抑制ができ、リバウンドもなくすことができたのです。
このように代替思考とは、ステレオタイプの思考を抑制するときに発生するリバウンド効果をなくすために考えられた思考法です。