更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:08 JST
リスキーシフトとは
リスキーシフトとは、アメリカの社会心理学者ジェームズ・ストーナーが最初に提唱した「集団で議論する際に、よりリスクの高い方向へ思考が動いて行く心理状態」を表す認知バイアスのひとつです。
日本では「赤信号みんなで渡れば怖くない」というギャグがありましたが、このギャグはリスキーシフトをそのまま表しています。
提唱者のジェームズ・ストーナーはリスキーシフトに関して以下の実験を行っています。
リスキーシフトの実験
リスキーシフトの実験として以下の2つを紹介します。
ストーナーの実験
ストーナーは、アメフトの試合において「残りワンプレーで試合が終わる」という局面下で、被験者やチームがどう判断するかを検証しました。
被験者には次の2パターンの選択肢が与えられます。
A. 安全なプレー
確実に同点で終わる
B. リスクのあるプレー
成功すれば勝ち失敗すれば負ける
ストーナーはBのリスクがあるプレーの成功率を徐々に上げながら(勝率はよくても50%)、被験者個人とチーム全体に対してどちらを選ぶか聴取しました。
最終的に、個人よりもチーム全体の意見の方が、よリスクが高い選択をするという結果になりました。
ワラックとコーガンの実験
ワラックとコーガンの実験では、大学受験に関する意思決定で、「被験者」と「被験者の属する集団」の判断がどのように変化するかについて検証しました。
被験者には以下の質問と選択肢が与えられます。
設問
以下の大学の中から1つしか受験できないとしたら、どの大学を受験するか?
A. 合格率100%の大学
B. 合格率90%の大学
C. 合格率70%の大学
D. 合格率50%の大学
E.
合格率30%の大学
F. 合格率10%の大学
実験の結果、個人の選択はA~Cに集中しましたが、団体での解答ではD~Fに集中するという結果になりました。
さらに団体での回答者に高いリスクを選択する人を加えたところ、さらにリスクの高い選択をする回答が増えました。
つまり極端な発言は集団の中では歓迎されやすいということも明らかになりました。
リスキーシフトの日常での例
日常生活でのリスキーシフトの典型的な例はSNSでの誹謗中傷が挙げられます。
おそらく直接面と向かっていては言えないような言葉も、匿名という点と集団の中で過激な発言を受け入れる状況となるので、より過激な発言が当たり前になってしまいます。
また、日本では日常ではありませんが、世界中のどこかで紛争が起きているのも、リスキーシフトとは無縁ではないはずです。
ひとりひとりは暴力を好んでいなくても、集団になると暴力という手段を取ってしまうのは典型的なリスキーシフトと言えるでしょう。
リスキーシフトを避ける方法
リスキーシフトを回避するためには以下の点に気を付ける必要があります。
集団では極端な発言が影響を持ちやすいことを理解する
リスキーシフトのような認知バイアスは、一度陥ってしまうと自分では気付くことができなくなります。
そのため、リスキーシフトが発生する状況をよく理解し、常に客観的にバイアスにかかっていないかどうかを意識する必要があります。
あえて批判する人を用意して同調を防ぐ
集団の多数派に対してあえて批判や反論をする人をあらかじめ準備しておくという方法もあります。
この人は「悪魔の代弁者」とも呼ばれていますが、同調傾向をストップする抑止力となります。
発言に対する責任の所在を明確にする
極端な意見に同調するのが増えるのは、発言に責任を問われないからという原因もあります。
発言は記録していることを伝え、誰が極端な意見に同調したのかわかるようにしておけば、極端な意見自体を減らすこともできます。