更新日:Tuesday, 07-Mar-2023 02:35:03 JST
グループシンクとは
グループシンクとは、社会心理学者のアービング・ジャニスが提唱した心理傾向で、「集団浅慮(Groupthink)」と訳されています。
グループ・シンクは、集団で合意形成をすることによって、個人よりも不合理な結論や行動を引き出してしまうことです。
「3人寄れば文殊の知恵」と言うことわざがありますが、グループ・シンクはその反対に集団で考えることで、愚かになってしまうのです。
グループ・シンクの実例
グループ・シンクによって大規模な事故が発生した例としては、アメリカのNASAがスペースシャトル「チャレンジャー」の打ち上げに失敗した例があります。
チャレンジャーの打ち上げ前には、部品製造会社から不具合の報告がありました。
打ち上げを中止して正常な部品に取り替えるのが通常の対処ですが、以下の理由によって打ち上げを強行したと言われています。
- プロジェクトはトラブル続きで、延期すれば予算縮小や打ち上げ計画自体の見直しにつながる恐れがあった
- プロジェクトチームに過度のプレッシャーから大きなストレスがかかっていた
- 乗務員の安全を優先するという合理的な判断よりも成果を優先させた
上記の結果、7名の乗務員が全員死亡するという大事故につながってしまったのです。
グループ・シンクが発生する原因
グループ・シンクが発生する原因には以下のことが考えられます。
時間不足
職場での会議を思い浮かべるとイメージしやすいですが、集団で議論する場合はある程度時間が限られることが多くなります。
複数の人間が長時間に渡って拘束されること自体に不都合なことが多いからです。
そのため、ある程度議論すると早めに結論を出そうとする動きになるのは仕方がないことでしょう。
その結果、浅い議論で結論を出すことが多く、グループ・シンクが発生します。
専門家の存在
議論の場に専門家が存在すると、グループ・シンクが起きやすくなるとも言われています。
専門家が存在するとたしかに一般的にはわからない面も考慮した意見を聞くことができますが、反面で専門家の意見には逆らうことができないという側面があります。
専門家は専門分野ではオーソリティですが、会議や議論では多面的な見方をしなければいけない面も多く、特定の方向からの専門家の意見だけを取り入れると重要な点を見逃す可能性が高くなります。
利害関係の存在
複数の人間が集まるとそれに伴って複数の利害関係も発生するので、個人で考慮する場合よりも複雑な利害関係となります。
それぞれの利害関係を優先させようとして妥協点を探すことが中心になってしまう可能性が高くなり、結果がいびつなものになってしまうのです。
過度のストレスが発生している
グループ全体が過度のストレスにさらされている場合は、グループ・シンクの発生する可能性が高くなります。
チャレンジャー号の例にもあったとおり、失敗や延期が許されないという状況では過疎のストレスが発生して冷静な判断ができなくなります。
グループ・シンクの防止策
グループ・シンクを防止するために会議や議論の場では以下の点に注意する必要があります。
グループを細分化して議論する
人数が多いほどグループ・シンクに陥る可能性が高くなるので、グループを少人数のチームに分けて議論させると効果的です。
それぞれのチームの結論は違ってくるはずなので、それらを調整することで多角的な視点から検討することができグループ・シンクの防止ができます。
批判者を決めておく
グループを小分けにして議論する時間がない場合は、あらかじめ多数意見に対して批判する担当者を決めておくことも効果があります。
担当者は自分の意見に関係なく多数意見に対する批判者として少数意見を述べるようにします。
こうして、少数意見も述べることができる雰囲気を作ることも重要です。
さらに外部の第三者を取り入れることで利害関係のない意見を聞くようにすることもグループ・シンクを防ぐ有効な手段となります。